「冗談」


そう言ってフッと笑う夕凪くんに、簡単に胸がキュッとなった。


(夕凪くんて、こんなに笑うんだ……)


「このお友達、カメコの理由知りたがってんな」


「えっ、あ、まつりちゃんは……っ……」


うまく喋れず言葉に詰まった私にも、夕凪くんは嫌な顔ひとつしないでいてくれる。


「…なあ、ウサギとカメって知ってるか?」


それどころか、彼は私と会話をしようとしてくれるのだ。


「あ…えーっと、昔話ですか……?」


「そう。カメって足はノロいけど、最終的にウサギに勝つだろ」


「はい……」


『ウサギとカメ』という、足の速いウサギと遅いカメが、山の頂上まで競争して、どちらが先にゴールするのかという昔話がある。


足の速いウサギは最初に飛び出すけど、途中でカメの遅さに油断して居眠りをしてしまった。


その間も歩みを止めず進み続けたカメは、ウサギが目覚めた時には既に山の頂上まで到達していて勝つことができたというお話。