夕凪くんは、いくら私が地味で素朴な格好をしていても何も変わらない。


嫌な顔ひとつしないで手を握ってくれるけど、周りから見れば不釣り合いで違和感だらけなんだと思う。
その証拠に、私に対する視線もものすごいのだ。


今日は髪の毛を三つ編みじゃなく、自分なりに勉強して巻いたみたり、お化粧もまつりちゃんに聞いたりして少しずつできるようになってきたけど、それでも全然届かない。


欲が出る。彼の隣に並んでも変じゃない、相応しい人になりたいという欲が。


「こっちのほうがいいんじゃない?」


「……ウサギ?」


夕凪くんの止まった先を見て思わず眉間に力を入れる。
目の前にディスプレイされていたのは、大きなウサギのぬいぐるみだった。


さっきの虎よりは小さめだが、確かにこれは女子の部屋にあっても不思議じゃない。手触りの良さそうなふわふわしたウサギのぬいぐるみ。


「顔が不満げだな」


「……虎じゃない」


ついむくれた顔で言ってしまう。
こんな顔ができるようになったのも、素直に思ったことを言えるのも全部、夕凪くんのおかげだ。