「なち、口開けて」
自分が言い出したことなのにものすごく照れくさくなり、どこかに隠れたい気分になる。
「やっぱり、自分でっ」
「ダメ。俺に慣れさせるっつっただろ?」
(……もう、慣れてます……)
こんなにも、夕凪くんだけ。
こんなにも、夕凪くんだけを思う。
私はゆっくりと口を開く。
きっと盛大に真っ赤な顔をしてるのだろう。
心臓がうるさい。夕凪くんがすきだすきだと必死に音を立てている。こんなに幸せな音があるなんて私は知らなかった。
「うまいか?」
「……はい、美味しいです」
そう答えれば、彼は満足そうな表情で笑う。なぜか食べさせ合いっこではなく、ただ私が食べさせてもらっただけになってしまったのだが……。
「じゃあ俺、そろそろ帰るわ」
ご飯を完食した後、夕凪くんは立ち上がり上着を着ている。