「夕凪くん。せっかくだから夕飯も食べてってね」


「はい、ご馳走んなります」


夕凪くんとお母さんはたった数回会っただけで打ち解けて、気づけば仲良くなってしまっていた。


お母さんは「あとで夕飯持って来るから」と言い残し、パタパタとリビングに戻って行く。
私が風邪をひいたせいで仕事を休んでくれたので、家でできる仕事をしてるのだろう。


(はやく、元気になろう……)


そんなことを考えていると、コンコンと夕凪くんが既に開いていた扉を叩いた。


「なちさんのお部屋、入っていいっすか」


心臓がドクドクと音を立てながら小さく頷けば、夕凪くんは上着を脱いでベッドのすぐ近くの床に座るので、慌ててマスクをつける。


「夕凪くん…、こんなだいじな日に、風邪を、ひいてしまって……ごめんなさい…っ」


私は布団にくるまったままベッドの上で土下座した。今の自分にできる精一杯の謝罪だ。