まつりちゃんには電車で出会った男の子のことを伝えていた。
ただ期待されている内容と、私が今から話そうとしている内容が異なっている気がする。
「え、その彼のことが好きなんじゃないの?だからいつも早起きして同じ時間の電車に乗ってるんでしょ…?」
「お、恐れ多い…!こんな地味で、気持ち悪い私が好きになっていい相手じゃ…っ」
夕凪くんは、どこからどう見ても私とは正反対の男の子。
私が隠なら、夕凪くんは陽なんだ。
そんな彼に私なんかが恋するなんてそもそも罪深い。
「なちは可愛いよ。性格も、見た目だってすごい可愛い」
まつりちゃんは真剣な眼差しで、丸メガネをかけた私を見つめる。
(本当に、なんて優しいんだろう……)
「というか、その人は見た目でなちのことをどうこう決めつけるような人?もしそうなら二度と関わってほしくないけど……そうじゃないんでしょ?」
「………う、ん…」
どこまでも優しい言葉に、声色に、鼻がツンとして泣きそうになった。