「……!」


それでも私はそっと夕凪くんの唇に顔を近づけていた。
ちゅっと小さな音が鳴る。


彼の唇からズレて触れたそれは、紛れもなく私からした初めてのキスだった。


そして微かに震える唇を離した途端。


「…っ…、」


首を抑えられて、再び唇が重なり合う。


「……っ、……んっ…」


(ふ、……か……っ)


吐息が漏れる。それは、甘くて、甘くて溺れそうなくらい苦しい。


「……ゆっ……な……っ」


名前をまともに呼べないほど、キスが深く蕩けていく。


(だめ……っ、のぼせそう)


息がうまくできなくて、夕凪くんの胸を小さく叩いた。