「今日もあなたに酷いことを言ったみたいで、本当に辛い気持ちにさせてごめんなさい」


「い、いえっ……!」


宮下さんに謝られることは何ひとつなかった。
むしろ何度も助けられて、今では宮下さんが私の夢の指針になっている。


「なちさんのお母さんが私に家庭教師をお願いした本当の理由はね、学校側に説得してもらうためなのよ」


「…っ…!?」


その言葉に驚いて、私はお母さんのほうを向く。
そうすると、優しい笑顔で小さく頷いた。


(お母さん……もしかして、最初からそのつもりだったの……?)


感極まり、どんどん視界が緩んでいく。
ふぅ、っと嗚咽が漏れてしまう。


私は何も話さなかったのに、お母さんは夕凪くんが黒霧生だということだけで否定するつもりはなかったのだ。