魂が自ら選んだとか、子どもは親を選べないとか、そういうんじゃなくて。
俺はただ、そんなことは関係ないと言ってほしかったんだ……──


「私は、夕凪くんのことが──……だいすきです」


"好き"という言葉自体、何度も言われてきたはずなのに、自然と胸が熱くなっていくのを感じた。なのに少しだけくすぐったくて柔らかい。


こんな気持ちは初めてで戸惑う。


ただカメコが俺を異性として好きだと言ってるんなら、俺は今まで愛とか恋とか、そういう感情で人を好きになったことがなかった。


たぶん、これからも心から人を好きになれないだろう。相手に同じだけの愛を与えられない。


だからこれでいい……傷つけたくない。


そう頭では思うのに……一華の家に戻っても、俺の心臓の音はドクドクと鳴り止まなかった。────