「あんた名前は?」


「……へっ…?」


「俺だけ知られてて不公平だろうが。これ、"みつまめ"って何?本名?」


左手をズボンのポケットに入れたまま、何の躊躇いもなく直視してくる夕凪くん。


私は視線に耐えられず、俯きぎみにコクコク、と頷く。


"みつまめ"は私の設定しているアカウント名で、アイコンは好きな小説の画像に設定していた。


「み、蜜豆なちと、申します……」


「ふ〜ん……蜜豆って呼びにく……」


「ご…ごめんなさい……」


まさか自分の名前で夕凪くんを不快にさせてしまうと思わなかった。
そもそも自分の名前を知ってもらうなんて想像もしてなかったから……


すると目を細め、何か考えている様子の夕凪くん。


「"かめこ"ってのはどうよ?」


「……?」


「なんかカメみたいだから、あんた」


そう言って夕凪くんが指差していた先は、駅の表札だった。


「降りんのも亀湖駅だし」


「………か、かめこ……」


「うん」


ジッと真っ直ぐに見つめられ……私はその綺麗な瞳に耐えられなくなり、目を逸らしてしまう。