「ち、」
「おいっ、そこのおっさん」
"痴漢です"と言おうとして、震えた1文字目を口にしたところで、誰かのハッキリとした声が重なった。
驚いてその声のほうを向く。
たった一言でその場にいる人達の注目を集めてしまうような、そんな声と容姿を持つ男の子。
彼は学ランを少し着崩していて、黒髪から金に染められたインナーカラーを覗かせている。
口元はマスクをしていて見えないが、分けられた長い前髪から見える瞳には目力があり、耳にはいくつかのピアスと指にはいくつかのシルバーリングが。
着崩したシャツの首元には、ネックレスがチラリと見えた。
(アクセサリーが、すごい……オシャレ……)
同じ高校生と言うのは、おこがましいと思うくらい……
自分とは桁違いの容姿の男子高校生に、私の口はポカーンと半開きになった。
何より、彼から感じるオーラがものすごいのだ。
「今痴漢、してたろ」
彼はギロリと睨みつけその男性の腕を掴むと、周りにいた人たちは一斉に距離をあけた。
それによって体がグッと圧迫される。