「よくわかったろ、俺はカメコが思ってるようなヤツじゃねぇって……母親から逃げてんだよ、ずっと。一華や右京にも甘えて、我儘で、あの女とそっくりで……反吐が出る」


「…………」


夕凪くんの低く嫌悪感の混じる声が響く。
私がハンカチで消毒液を拭き取り傷テープを貼れば、彼は「どうも」と腕を引っ込めてしまった。


「だからいい……一華に何言われたか知らねぇけど、俺のことどうこうしようとしなくていいから」


「…………」


「感謝だってしなくていい…、ずっとカメコのこと利用してたし……」


「?」


「あんな母親が嫌いで、血が繋がってる自分が気持ち悪くて…、それでも、後継ぎだとか金持ってるとかそういうの抜きにした、空っぽの俺でも、ただ生きてていいって思いたくて……カメコは俺にとってちょうどよかったんだ」


「…………」


「だからカメコのためじゃない。全部自分の認められたいがための欲に、カメコを利用した。そういう汚ねぇ人間なんだよ……結局母親に似てて、最悪だわ」


ひとりで、うずくまる。
大きな体を小さくして。震えて。うずくまる。