「そうそう、それで高校に入って一人暮らしも始めてね」


「え。夕凪くん、ひとり暮らしですか……?」


「うん。実家にいたら母親がまた突然来るかもしれないし、今うちに泊まらせてるのもあの人が仁のこと探してたからなの」


……そうだったんだ。
それで夕凪くんは北風先生に朝送ってもらってたのか、と理解する。


「仁が今に至るまでの話はこんな感じかな……なっちゃんにこの話をしたのはね…、前にも言ったけど、仁が初めて自分から動いた女の子だからだよ」


「っ……」


「あんなになっちゃんのために必死になる姿も、なっちゃん見て笑顔になったり、褒めたり、仁にとって全部初めてなんだ……やっとあの子も人間らしく、年相応な男の子になれてるんだと思ったら私も嬉しくなっちゃって……だから、ありがとう。さっきも仁のこと、守ってくれたよね」


「……!……っ、?」


夕凪くん、褒めてたかな?と思いながらも、一華さんの言葉に再び涙が浮かんでしまう。
全然守れてなかったのに、むしろ夕凪くんに庇われてしまったのに、どうしてそんな風に言ってくれるんだろう。