「仁、あの人は車で連れて帰ってもらったよ」


「あぁ……このまま家帰んだろ?こいつのこと任せていい?」


夕凪くんは外した私の眼鏡を再び元に戻す。


「え、それはもちろんだけど……何で?」


「なんか今俺、ひでぇことしそうなんだよ」


「…それはダメね」


すぐに理解した様子の一華さんに、夕凪くんは「そういうことだから、よろしく」と言うと、そのままどこかへ歩き始めた。


「なっちゃん。ちょっとあの子、今は冷静でいられないっていうか、たぶん頭冷やしたいんだと思うから。一旦うちにおいで」


戸惑いながらも、ひとつ頷く。


酷いことしそうと言ったのは、殴ったり叩いたりしてしまいそうだということだろうか……?


(少し叩かれるくらいだったら、耐えられるのにな……)


それよりも、ひとりで歩いていく背中が寂しそうで、ただただ胸がきゅうっと切なくなってしまう。
夕凪くんの歩いていく後ろ姿を見つめながら、私は一華さんのあとをついて行った。