もしかしたら宮下さんが、黒霧生で不良と名高い夕凪くんのことを知らないから言えることなのかもしれない。
でも例え知らなくても、私の気持ちが一緒にいたいと感じるのなら大事にしていいんだと、誰であってもそれは変わらないんだと言ってくれてるみたいで……──
(どうして、わかったのかな……)
こんな日陰に隠れて生きてきたような私が、夕凪くんのそばにいたいと思ってしまうこと。
夕凪くんが、私の言葉を受け取ってくれるということまでも……
「──なちさん、さっきお母さんのこと嫌な言い方をしてしまってごめんなさいね」
宮下さんは、そう帰り際にお母さんに対して悪く言ったことを謝罪してくれた。
そしてもう家庭教師は必要ないから来ないけど、相談事や助けてほしい時には呼んでいいとまで言ってくれた。
「赤の他人のほうが話しやすいこともあるからね」と。
(私もいつか、なれるだろうか……なりたいな……あんな風に、心を優しく包み込めるような人に……)