隣で湊人は息を飲み、ヒデの手も止まっていた。
こいつらには女子を虐めるという思考がないから、余計胸糞悪いだろう。


「頭にきた私は、その男子グループに何か言われてそうな場面を見つける度に、なちのこと背中に隠して言い返してきたけど……、そんなのは遅い……傷ついたなちの心は元に戻らないんだもん……消せないんだもん…っ」


そう言って雛形は歯を食いしばり、出てきた涙を服の袖で豪快に拭う。その拳は強く握られていた。


「仕返ししたかった!なちの心を傷つけた分、アイツら全員痛めつけてやりたかった…!今でも地獄に堕ちればいいと思ってる……だけど、……全然気づけなかった自分に、一番ムカついてしょうがないっ……!例え違うクラスだったとしても、ちゃんと見てれば、下を向き続けるあの子に気づけた。何かに怯えるあの子に気づけたのに、って……どれだけ後悔しても、時間は戻らないのにね」


「それ……お前はなんも悪くねーだろっ?」


「っ!?」


潤んだ目の雛形に、ヒデがキレたように言い返した。
そしてバンッとテーブルにフォークを叩きつけ立ち上がる。