それに俺の場合はアイツに……カメコに触れるんだ。触れるっつーか、気づいたら勝手に触ろうとしてたんだよ……自分でもおかしくなったと思う。


逆に本屋で服の裾を掴まれた時は、嫌悪を感じるどころか、心臓がドクンと音を立てて止まり、急に大きく波打っていた。


「でも、あんたには違ったみたい……"夕凪くんのことは怖くない"んだって」


「…っ…、」


俺のことは、怖くない……?──


その言葉に、心なしか胸の温度が上がった気がする。


あんな風に正直に一途に生きてる人間が、他の男子は怖くて、素行の悪い俺のことは怖くないらしい。
そんなアホな話があるかと思うのに、なぜか嘘だとも思えない。


「不思議だよね。"黒霧のブラックタイガー"って呼ばれてる男子なのに……悪い噂なんてそこら中に転がってるような夕凪仁のことを、なちは怖くないって言うんだから」


そう言って再び謎のドリンクを口に入れた。