ふいに彼女が、ふふふ、と忍び笑いをもらした。なににたいして笑っているのかはわからないが、その笑みが少女のようにあどけなくて、かわいいなと思ってしまう。

「私に会いにきてくれてありがとう」

 綾音が三日月型に細めた瞳で僕を見ていた。いや、と短く答えるだけで精一杯だった。

 自分のした行いはそれほど間違ってはいなかった。彼女がその答えをあたえてくれただけで、もう充分だ。