「正直に言うと、きみのお兄さんには会ったこともない。リアルでも、ネットのなかでも」

「……な。そんなはずはないわ。それならなぜ私と兄のことをあんなに詳しく知っていたの? 兄から聞いたんじゃなければ、なんで」

 白石刀哉は眉をさげ、申し訳なさそうに私を見た。瞬間、胸のおくがきゅっと痛んだ。

 彼は口をあけては閉じ、なにかを言いあぐねているのだと思った。

 私には言いにくい内容ではないかと予想し、聞くのが怖くなる。はぁ、と白石刀哉の嘆息が聞こえた。

「ごめん。今から話すことはとうてい信じてもらえるような内容じゃないんだけど……。聞いてくれる?」

「ええ」

 膝の上に置いたショルダーバッグを、静かに握りしめた。