「意識を取り戻しても、真っ暗闇で、なにも見えなかった。両方の眼球にガラス片がささったせいで、手術をして取り除くはめになった。目のほかには肋骨を何本かやられたらしいけど、よく助かったなって思うよ」

「……両目を?」

 白石刀哉の話を聞いていて、背中の中心がぞわりと粟だった。彼の話の、その続きをもっとよく聞きたいと思った。

「しばらくのあいだ。両目がなかったんだ。本来なら目のある場所にぽっかりと穴があいて」

 白石刀哉はいつもかけている黒いセルフレームの眼鏡をはずした。

「眼鏡をかけるようになったのは、事故の後遺症によるものだから伊達なんだけど。とにかく目をさらしているのが恐い」

「……それじゃあ」

 今、彼が外界を映している茶色の瞳は?

 言葉をつづけようとして、私は息を飲み込んだ。真っ直ぐに私を見つめるその()に心臓がつよく拍動した。

「予想がつくと思うけど、移植手術を受けた。運が良かったと言ったらきみには申し訳ない……この目は翼さんの()だよ」