「お嬢様がこんなに立派になられてとても嬉しいです」


「俺達は自分の仕事を精一杯やってるだけです。お嬢様が心配することはなにもないですよ」


「でも……」


「自分の行いを反省出来るようになったってのは大きな成長だぜ?喜ばしいじゃねぇか!大人は子供の成長を見届ける義務があるんだよ」



料理長のバロックはガハガハと笑いながらクシャッと私の頭を撫でた。


あんなに酷いことした私をみんな許してくれるの……?


あったかい……。


もっと早くみんなと向き合えばよかった。


だってバロックがここまで気さくな人だって知らなかった。


今日は初めて知ったことばかりだ。


これからみんなのこともっと知っていこ……。



「ところでお嬢様、旦那様と離れたくなくて婚約破棄したいとおっしゃったのは本当なのですか?」



え゛ぇ゛。



「なぜそれを……」



もしかして、とナーサリーを見てみればナーサリーはぶんぶんと首を横に振った。


となると犯人はあいつしかいない。


ジェフリーのいる方を見てみればジェフリーとバッチリ目が合う。


ジェフリーは楽しそうに口元を隠しながら笑っていた。


あの裏のある笑みはそういうことだったのね……!



「確かに旦那様はとても格好良い方ですものね」



見た目は確かに格好良いと思うよ?


私の好みではないけどね。



「何考えてるかわからない所がまたミステリアスですよね」



ミステリアスな所が私的には恐怖である。



「ヴィルフリート殿下が好きで婚約したのでは?」



そりゃ前世を思い出す前までは好きだったけど……。



「そんなヴィルフリート殿下よりも旦那様が好きってことだろ?」



使用人達が一斉に微笑ましそうな目を向けてくる。


やめて、そんな目で見ないで……!


違うから!


言わなきゃよかったと再度後悔しながらも集まりをお開きにした。