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「あれセリナ、お前」
───助手席で良かったの?
観月のいる後部座席には興味すら示さず、当たり前のように助手席に座る。
俺はそんな些細なことにすら救われる。
可笑しな話だ。
「いけない?」
「…いや」
出来たら、一生座っててくれな。
「どういう意味」
「…ご想像にお任せします」
何も意図していない様子の当人。
突き刺さる視線は何だか痒くて
俺は手早にエンジンを掛けた。
「───悪いな」
「ん?何が」
「いや何か、色々してもらったみたいで」
走り出してから、二十分ほどが経っていた。
二十分、或いはそれ以上。
口に出す言葉でも考えていたのかと思うと。
つくづく哀れな奴だなと、俺は思う。
生憎、俺はアイツほど出来た人間じゃない。
ミオは、俺なんかよりずっと慈悲深いけど。
その分セリナの為なら何でもできるような男で。
つまり、何を言いたいのかというと。
「───セリナの頼みだからな」
お前だけなら道に捨ててる。
そう言って笑う俺を、観月はキッと睨むようにして見つめた。
───つまり。
俺等はこいつの為なら何でもできちゃうよ、ってこと。



