伝説に散った龍Ⅲ














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「あれセリナ、お前」





───助手席で良かったの?




























観月のいる後部座席には興味すら示さず、当たり前のように助手席に座る。



俺はそんな些細なことにすら救われる。



可笑しな話だ。







「いけない?」



「…いや」





出来たら、一生座っててくれな。





「どういう意味」



「…ご想像にお任せします」





何も意図していない様子の当人。



突き刺さる視線は何だか痒くて



俺は手早にエンジンを掛けた。






































































「───悪いな」



「ん?何が」



「いや何か、色々してもらったみたいで」





走り出してから、二十分ほどが経っていた。



二十分、或いはそれ以上。



口に出す言葉でも考えていたのかと思うと。



つくづく哀れな奴だなと、俺は思う。



生憎、俺はアイツほど出来た人間じゃない。

























































ミオは、俺なんかよりずっと慈悲深いけど。



その分セリナの為なら何でもできるような男で。



つまり、何を言いたいのかというと。





































































「───セリナの頼みだからな」





お前だけなら道に捨ててる。



そう言って笑う俺を、観月はキッと睨むようにして見つめた。






































































───つまり。



俺等はこいつの為なら何でもできちゃうよ、ってこと。