「あ、柚起きちゃったの?」
「…どういう状況?これ」
セリナの姿を目にすると、観月は気怠そうに息を吐きだした。
俺には、それが安堵しているように見えて仕方がなかった。
「私一人じゃ二人いっぺんに救助できなかったんだよ。
近くに彼等が住んでたから伝ってもらった。迎えに来たよ、柚」
「こいつ、…この人ら、お前の知り合い?」
「うん。仲良いの」
“仲良いの”。
ケロリとした表情で言い放ったセリナに、思わず頭を抱える。
「雑だな」
「…そう?」
「うん」
セリナが観月に手を差し出す。
観月は迷うことなくその手を取るとさらに、躊躇いもせずセリナに寄り掛かる。
「…それ、歩けんのか?まともに」
訝しげに尋ねる俺に
セリナは『大丈夫だよ。私が支えるから』と答えるが
対照に、観月は激しく首を横に振った。
ミオに視線を送る。SOSのサイン。
「…車出そうか?セリナ」
「え、いいの」
「おう。雄大が」
「おーおー。送りますよ」
「えー雄大くんありがとう」
「いーえ。…おらガキ、早く乗りやがれ」
少々不本意だが、致し方あるまい。
黙って背中を差し出す。
存外素直に担がれた観月は、見た目以上にずっしりと重たかった。
ただ少し。
アイツの隣を歩くには不安な体だな。
やっぱり駄目だよ。お前じゃ。



