伝説に散った龍Ⅲ




















…分かってる。



こいつは、アイツが選んだ相手だ。



一緒に歩くことを



アイツが、アイツの意思でそう決めた相手。

























分かっているつもりだった。



俺等は



物分かりのいい、出来たお兄ちゃん。



ミオが言ったんだ。



あの日



セリナの近くに居るのがこいつらだと、分かったあの日。







『───俺たちは分かってやろう』







今まで聞いてきた何億何千万かの言葉の中で



際立って、切ない響きをしていた。



力強く頷いたのは、俺だけが知っていたからだ。



ミオがアイツに向ける視線の本当の意味を、知っていたから。











































───馬鹿だな、お前は。





口には出さずにミオを見た。



その視線に気が付いたのか、ただただ目が合ったからなのか



意味あり気に口許を緩めたミオは、ソファの方へ足を寄せていく。

































「…誰だよ、お前ら」





あらあら。こんなに警戒しちゃって。



助けたんだけどな。これでも、一応。





「“セリナの知り合い”」





まあ、いいか。





「そういえば分かるだろう」





だいたい、俺はコイツらが嫌いだ。



多分一生、好きになれない。







































「……あいつは何処だ」





“あいつ”。



迷うことなくそう口にした観月を眺めて、俺は気が付く。
































































───そうか。お前も。



……どいつもこいつも。



まあ、気持ちは分からなくもないけど。



やっぱ嫌いだ。






















「ちょ、雄大さん待っ、」





棗が俺を制止する。



でも聞こえない。今の俺には。



何せ苛ついている。
哀れなフリをする、ガキに。














































「セリナあぁ────‼」





腹から絞り出した叫び声は見事、広い建物の隅から隅へ反響した。



程なくして、ドアを開く人影。





「聞こえた?」



「うん。ちゃんと」



「…ん」



「雄大くん声デカすぎ」

































───お前が、嬉しそうに笑ってる。