…分かってる。
こいつは、アイツが選んだ相手だ。
一緒に歩くことを
アイツが、アイツの意思でそう決めた相手。
分かっているつもりだった。
俺等は
物分かりのいい、出来たお兄ちゃん。
ミオが言ったんだ。
あの日
セリナの近くに居るのがこいつらだと、分かったあの日。
『───俺たちは分かってやろう』
今まで聞いてきた何億何千万かの言葉の中で
際立って、切ない響きをしていた。
力強く頷いたのは、俺だけが知っていたからだ。
ミオがアイツに向ける視線の本当の意味を、知っていたから。
───馬鹿だな、お前は。
口には出さずにミオを見た。
その視線に気が付いたのか、ただただ目が合ったからなのか
意味あり気に口許を緩めたミオは、ソファの方へ足を寄せていく。
「…誰だよ、お前ら」
あらあら。こんなに警戒しちゃって。
助けたんだけどな。これでも、一応。
「“セリナの知り合い”」
まあ、いいか。
「そういえば分かるだろう」
だいたい、俺はコイツらが嫌いだ。
多分一生、好きになれない。
「……あいつは何処だ」
“あいつ”。
迷うことなくそう口にした観月を眺めて、俺は気が付く。
───そうか。お前も。
……どいつもこいつも。
まあ、気持ちは分からなくもないけど。
やっぱ嫌いだ。
「ちょ、雄大さん待っ、」
棗が俺を制止する。
でも聞こえない。今の俺には。
何せ苛ついている。
哀れなフリをする、ガキに。
「セリナあぁ────‼」
腹から絞り出した叫び声は見事、広い建物の隅から隅へ反響した。
程なくして、ドアを開く人影。
「聞こえた?」
「うん。ちゃんと」
「…ん」
「雄大くん声デカすぎ」
───お前が、嬉しそうに笑ってる。



