中途半端にうずくまった思考。
靄が晴れないまま、ああだこうだと騒いでいれば
さすがにうるさかったのか
「…ん、っつぅー…」
小さな声が耳に届いて、俺たちは現実へと引き戻される。
まずい。起こした。
部屋の隅に寄せられたソファで、人影がゆらりと動いた。
「…あ?」
機嫌の悪そうな低い声。
クソガキ
基、観月柚は
俺たちの顔を見るや否やあからさまに表情を歪める。
相手はもちろん知らない。
此処がどこなのか。俺たちは一体誰なのか。
合わない焦点が物語る。
きっとあいつは言っていない。自分の正体でさえ。
それは
すごく悲しいことだと思う。
────あいつは苦しいのだと思っていた。
この場所は、あいつを苦しめる場所なのだと。
だから、ここを離れれば楽になれるのだろうと。
しばらくしてようやく会えたらしい新しい居場所に、嫉妬こそしたが
『これでやっとあいつは楽になれる』
そう思って。
だから我慢しようとつとめた。
なのに。
それが、すべて覆った気さえした。
まだ、本当の自分すら隠しているのか。
お前は一体
何処でなら楽に息ができるんだろうな。



