燐の頬を、一筋雫が伝っていった。 先ほどまで飄々と笑っていた彼の面影が、色を失っていく。 「あのとき、」 「うん」 「あのとき、何もできなくてごめん」 「…うん」 「エンちゃんの手を、引けなかった。“行かないで”って言えなかった」 「うん」 燐が笑う。 泣いてるみたいに。 ごめん、エンちゃん────