「ヘレン…どうしてそこまで反抗するの?」

素朴な疑問を投げ掛けると、

「ババアから聞いてるよ。お姉ちゃんは、あたいと違って聞き分けのいい子だったって」

私だって、母からは散々詰られてきたが、ヘレンを貶すためだけに聞き分けがいいと言われるとは…。

「ババアさ、出自がお嬢様なのをメチャクチャ鼻にかけてるけど、見合いで結婚してるじゃん?まともに仕事したことないみたいだし、そういう人が母親になると、ああなっちゃうのかなって。子供相手にしか偉そうにできないというか。実はさ…お姉ちゃんも、子供ができたら、ああなるんじゃないかって、凄く心配だったんだ…」

その言葉にギョッとしてしまう。

「こんなこと、今さら言ってもどうしようもないし、きっと信じてくれないだろうけど…あたいね、8年前から、DV野郎の本性に気付いてたよ」

「うそでしょ…?」

いつか、元夫がヘレンのことを、わざと披露宴で「行かないで」と泣いたと決めつけ、計算高いガキ呼ばわりしたことを思い出す。