「お客さん、終点ですよ」

高速バスの運転手に声をかけられ、私は目を覚ました。

早朝の便に乗ってきたので、外はまだ真昼。

「ありがとうございます」

小声で言うと、バスを降りる。

8年ぶりに戻ってきた地元。

今日から、また倉田法子として実家に居候する。

駅前は相変わらずパッとしないまま。

あの人と結婚した頃、まさかこんな日が来るなんて思いもしなかった…。

「全く…離婚するなんてみっともない!」

母は電話越しに何度もそう言っていたし、私も地元が好きではなかった為、この帰郷は互いに本望とは言えないのだが、疲れ果てた私には行くあてがない。