そんなわたしを見て、黒髪の人は微笑む。


「いい子だ」


まるで、わたしを子どもかペットとでも思っているのだろうか。


だけど、その表情に悪意はなく、わたしもつられて微笑んでしまった。



黒髪の人が錆びついたドアを開けると、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。


家の玄関のドアを開けても、いつもしんと静まり返っている。

ドアを開けたその先が、こんなに賑やかな雰囲気なのはいつぶりだろうか。


しかし、黒髪の人は入ってすぐのところにかかっていた上着を剥ぎ取ると、それをわたしの頭に被せた。

まるで、顔を隠すように。


そうして、わたしは前も見えないまま、どこかへと運ばれる。



「「総長、おかえりなさい!」」


視界は、なにも見えない。

だけど、黒髪の人にあいさつする声が聞こえる。