わたしを乗せたバイクは走り続け、寂れた繁華街を通り過ぎ、人通りのなくなったシャッター街の中の路地を進んだ先で、ようやくスピードを落として止まった。


辺りはすっかり暗くなってしまって、切れかけた街灯が不規則なリズムでチカチカと光る。


そして、わたしの目の前にあったのは、廃墟となった建物。


黒髪の人はバイクを下りると、その建物の地下へと続く階段に向かった。


そこで、くるりと振り返る。


「こいよ」


黒髪の人は、初めて少しだけわたしに微笑んでみせた。


その温かい表情に、思わずほっとしてしまう。


――だけど。


「あ…あれ……?」


バイクから下りようとするも、なぜか足に力が入らない。

まるで、自分の足じゃないみたいに。


張り詰めていた緊張が解れたせいだろうか…。