ストロベリーキャンドル


「なんでだろう。月葉に会いたかったからかな?月葉に会いたい!っていう気持ちが大きくて、気づいたらここにいた。真っ暗で何も見えなかったんだけどなんかビビった感じて振り向いたら月葉がいたって感じかな?」

嶺緒。海外に行ってしまってから一度も連絡を取っていなかった。元気かなとかすごく心配だったし、記憶が戻ってない嶺緒に深く干渉しすぎても良くないと思っていた。でも、私に会いたいって思っててくれたんだ…それだけで嬉しいよ嶺緒。

「また泣いてる!泣かないで月葉。俺は月葉の笑ってる笑顔が好きなんだ。月葉の笑顔を見ると俺も頑張ろ!って思う。だからさ、笑って!月葉」

「えーがーお!」って言ってる口角を上げている嶺緒の姿を見ると自然と笑えてくる。可愛い。

「嶺緒。私ね、嶺緒と出会えてすっごく幸せだったよ。生まれた時からずっと一緒で、何をするにも一緒で。嶺緒が隣にいないと不安になるくらい安心感があって、一緒にいると心地よくて」

「うん」と嶺緒は優しい顔でまっすぐ私の話を聞いてくれる。なんで急に話し出したのか自分でもわからないけど、今急に嶺緒に聞いて欲しいって思った。何故だかわからないけど…今だって思った

「でも、中学生になるとお互い少し恥ずかしくなって別で行動する方が増えて、正直悲しかった…でも嶺緒と付き合うようになって今まで以上に一緒にいる時間が増えて…やっぱ嶺緒の隣にずっといたいって思った…嶺緒が私の隣からいなくなったらどうしようってずっと不安だった…でもその度に嶺緒は私に愛情をくれた…」

つい感情が溢れて泣き出してしまった。この1年間寂しかった思いだったり、苦しかったりずっと伝えたかったこととか。思ったらすっごい寂しかったんだなって思った。でも嶺緒の記憶は誰のせいでもない。だから誰かのせいにするのも違う。それが余計に辛かった…

「嶺緒が事故の時私を庇ってくれたせいで頭を強く打って、記憶を無くしてしまって自分のせいだってすっごく後悔したししんどかった。嶺緒に会う度に違う嶺緒を実感して辛かったし…嶺緒じゃなくて自分がなればよかったんだって…すごい考えちゃって…でも、嶺緒の記憶が戻った時にこんな姿の私をみたら怒られちゃうなって思った…」

誰にも言えなかった。私の気持ち。瑠奈にも輝羅にも誰にも言えなかった。心配されると思ったから、大丈夫だよって笑うしかなかった。

「でもね、私が心臓病が分かって、余命一年って言われて、なんで私ばっかりって思ったんだ…やっぱり記憶喪失も私がなれば全て済んだのにって…そんなこと考えてたら情緒不安定になっちゃって、ほぼ鬱状態になっちゃったんだ…でもみんなのおかげで闘病生活を頑張って乗り越えたんだ…今も手術中。うまくいくかわかんないけど…」

嶺緒にならなんでも言える。安心感があって、本音を言える。

「大丈夫だよ。月葉。手術は絶対うまくいく。そしてそのあと幸せな人生が待ってるよ。周りの子に助けてもらって、時には喧嘩するかもしれないけど、月葉のことが大好きな子達と幸せな生活を築けるよ。だから心配しなくても大丈夫」

私の頭を優しく撫でてくれながら、優しい声で話してくれる。大好きな嶺緒。

「え!?」

急に真っ暗な暗闇からパッと明るくなった。辺りは真っ白な空間になって何もない不思議な空間だった。

「あーそろそろ目が覚める時間だね」

え、もしかして。夢から覚めたら私は…

「嘘でしょ。夢でも、せっかく嶺緒に会えたのに…また離れ離れになんてなりたくないよ。いやだよ嶺緒。私とずっと一緒にっ…」

喋っている途中に嶺緒にキスをされ口を封じられた。もしかしたら最後になるかもしれない。何故だかわからないけどそんな感じがした。

「じゃあね、月葉。俺たちは離れててもずっと一緒だよ。大丈夫1人じゃない。また会える、絶対。俺たちは…」

笑顔な嶺緒の姿を最後に私は目を覚ました。