ストロベリーキャンドル


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「…は…つき…は…つきはーー!」

真っ暗い暗闇の中でうっすらと私を呼ぶ声がする。何年も何十年も聞いてきた心地の良い低い声。でも、周りには誰もいないし、暗くてよく見えない。声がする方へ向かってみると、大好きな貴方がいた。

「嶺緒?嶺緒!!」

私は嬉しくて駆け走って嶺緒に抱きつきた。嶺緒は昔みたいに私を抱き返してくれた。優しくて、でも力強い。安心ができる温かさ。

「嶺緒、嶺緒。会いたかったよ嶺緒…嶺緒!」

「月葉…」そう言いながら私の涙を拭いてくれた。嶺緒の顔を見ると嶺緒も泣きながら笑っていた。

「なんで?なんで嶺緒が泣いてるの…嶺緒が泣くことなんて見たことないよ…」

「久しぶりに月葉に会えたからかな?なんちゃって」

「どーいうこと!笑わせないで!」

なんちゃってなんて古って思ったけどここは何も言わないでおこう。でも、嶺緒に会えた事が久しぶりで嬉しい。でも、この嶺緒はなんか昔の頃の雰囲気がする。私が最後に会った嶺緒とは違う。ここは夢だから?今本当の私は手術中で眠っている。眠っている私に昔の嶺緒が会いに来てくれたのかな?

「ねー嶺緒。なんで今私に会いに来てくれたの?ここ私の夢の中だよね?周りも真っ暗だし…」

「そうだよ。月葉の言う通りここは月葉の夢の中だ。手術中で麻酔で眠っている月葉の夢の中」

嶺緒は優しく微笑みながら私のことを見つめてきた。嶺緒に会うこと自体が久しぶりだけど、この、私の大好きな嶺緒に会うのは一年振りでなんだか少し照れてしまう。

「え、でもさなんで私の夢の中に嶺緒がいるの?」

そう。私はこれをずっと疑問に思っていた。この真っ暗な暗闇の中で何故嶺緒は私の夢の中にいるのか。そしてそれも何故昔の嶺緒なのか。