ストロベリーキャンドル


夕方。仕事帰りのお父さんとお母さんが病院にやってきて3人で先生の話を聞くことになった。診察室に入り先生と対面した。

「本日はわざわざお越しいただきありがとうござます。」

真っ先に口を開いたのは先生だった。ちょっぴりピリついた空気感の診察室は緊張感が出る。

「いえいえ、それでお話というのは?」

お父さんがそう聞くと「では本題に入ります」と先生がいい私の方を見てきた。

「崎谷さんの。月葉さんの心臓移植相手が決まりました。」

「え...」

い、今なんて?私の心臓移植相手が?現れたの??

「先生。それは本当なんですか!?」

お母さんが涙を流しながら先生に問いかけている。お父さんも嬉しそうにしていた。そんな中私はいまいち状況が理解ができていない。移植相手が現れたということは、私は生きれるの?これから先の人生を歩むことができるの?

「はい。丁度移植ができる心臓が現れたのです。崎谷さんたちが望むのであれば2週間後には手術が可能です。どうしますか?」

「是非!よろしくお願いします」

お父さんとお母さんは先生に頭を深く下げていた。私もそれを見て頭を下げた。
 
「では手術日を決めましょう。この日とかどうですか?」

先生と両親が手術の日程などを決めて行っている。でもやっぱり私の心の中は驚きが隠せなかった。心臓移植というのはそう簡単に出来るものではない。

心臓が現れたとしても何人も待っている人がいて、順番があって...それを通過できないとなかなか移植ができない。それなのに私が選ばれるなんて驚きが隠せなかった。

嬉しい。嬉しいけどその代わりに誰か他の人は選ばれず...そしてその心臓の持ち主は亡くなった。1人の命を背負って生きていかないといけない。改めてその責任の重大さを身に感じた。

私に出来るのかな。これから先の長い人生を、たくさんの人の人生を犠牲にして生きていく。それが私に出来るのかな。でも、私がこの移植を受けなかったら一年未満で死ぬ。それもそれで嫌。どうしよう....

でも、受けよう。どれだけの可能性を持っていたとしても、私がその思いを背負って生きていくんだ。大丈夫。この1年間の出来事を乗り越えてきたんだ。乗り越えてはいないかもだけど....私なら大丈夫...きっと....

手術日が決まった。4月4日に私は心臓移植手術を受ける。今日が3月24日だからあと11日後。それまでに先生から色んな説明を受けた。手術の方法。手術後のリハビリなど....日が経つにつれて手術に対する緊張と恐怖が生まれ始めた。