ストロベリーキャンドル


その時、私の目から一粒の涙が鼻の横を通ったことに気がついた。

それに気がついた途端…『プツン』と何かが切れたような気がした。だんだんと視界が狭くなって、涙が滝のように次々と流れ始めた。

「ゔ…ゔわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

今まで私の行動が月葉をこんなにも傷つけていた。

私は....なんてことをしたのだろうか....余命宣告をされて一番辛いはずの月葉が....こんなにも強くなっているのに…私は…私は…その現実から逃げてしまった。

「うわぁぁぁぁぁぁ…あぁぁぁぁ…ッヒック…っう…」

どんどん涙が出てくる...手で抑えても手の隙間から溢れるくらい…

「っご…ごめ…ん…なさい…ぅ…ッヒック…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

泣いても、謝っても…許されるはずがないのに…私は謝り続けることしかできない…

「ごめんなさい…ごめんなさ…」

フッと私の顔の横に風がかかった。月葉が私に抱きついてきた…

「もういいよ瑠奈…十分…もう十分だよ…私の方こそ....瑠奈に辛い思いをさせてごめん…ごめんなさい....」

耳元で、その優しい声で…私をそっと支えるように月葉は言った。

「ゔ.....うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「ゔわぁぁぁぁぁぁぁ」

病室で…私と月葉は床で抱き合いながら、泣いた。

「二人とも…」

立って泣いていた輝羅も私たちの中に入ってきて、一緒に泣いた。

──ガラガラ

扉が開いて流がそっと病室から出ていったことに、私たちは気づいていなかった。

それからどれくらい泣いたか分からない。気づいた時には外が真っ暗になっていて、面会時間終了ギリギリだった。

館内放送が流れた時までほとんど記憶になかった。ただただひたすら泣いた。

「そろそろ面会時間終わるね…じゃあ、今日は一旦帰ろ?」

冷静を保っていた輝羅が私たちに言ってきた。

いつもは元気で明るくて、しっかりしてなさそうな輝羅だけど実際、こうゆう時になったら一番冷静になって頼れる存在。

そうゆう輝羅が私たちは好きなんだ。

「そうだね…じゃあ月葉…バイバイ…」

荷物を持って輝羅と一緒に帰ろうとして、ドアに手をかけた。

その瞬間…

「瑠奈!!」と月葉が大きな声で私を呼び止めた。

振り返ると月葉が満面の笑みで口を開いた。

「瑠奈。今日は来てくれてありがとう。本当に嬉しかったよ。また…また来てくれる?」

最後の方は恥ずかしいのかほとんど聞こえないくらい声が小さかった。

でも…

「もちろん!!」

私なら分かる。ずっと一緒だから。私たちはまた、やり直せる。だから、大丈夫。きちんと…月葉の病気も理解して。私よりも、月葉の方が辛いと思うから…

だから、私は月葉を支え続けるよどんな結果になろうと、最期は笑って…

ね?月葉…

右目から一粒の涙が流れた中で、私は星空満点の満月の夜に自分の心に固く誓った。