ストロベリーキャンドル


「うん…一年後までに相手が見つかんなかったら」

「そ…そんなことって…」

流も驚きを隠せていない。

「ごめん…今日は帰るね…ごめん…」

さっきから耐えられなさそうにしていた瑠奈が病室から出て行った。

「瑠奈!!ごめん月葉…」

瑠奈の後を追いかけて、輝羅も帰っていった。病室に一人置いてかれた流は椅子に座った。

「月葉、俺はまだ気持ちの整理がつき終えていない。でも、これから月葉の支えになるように頑張る」

「ありがとう。流」

流から彼氏みたいな発言をされた時に、お兄ちゃんの顔がちょっとだけ歪んだ。

「それに、嶺緒からの頼みでもあるから」

「えっ!?」

嶺緒の…頼み?…そんな…嶺緒からの頼みなんて…

「嶺緒最近学校に来ていないんだ。それでこの間連絡した時に『俺の心配はいいから月葉の支えになってやってくれ』って」

そんなこと言ったんだ…

「その時驚いたよ。前の、事故に遭う前の嶺緒ならまだしも今の嶺緒がそんなこと言うなんて思ってもいなかったからさ」

嶺緒…嶺緒!!…

「嶺緒に会いたい…」

「連絡してみたら?月葉からの連絡だったら来ると思うな。今の嶺緒だったら」

急いでスマホを出して連絡を入れる。急ぎすぎて文字が打てない。

[嶺緒、会いたい。会いに来て…]

すぐに既読がついたけど、返事は来ない。無視された…そうだよね学校来ていないんだからそんな簡単に来れないよね。

「まぁーそうゆう時もあるよ」

流がそっと励ましてくれた。私、今日からちゃんと治療する!それで来年も、再来年もみんなと一緒にいたい!

──ドドドッ

病院の中を駆け回っている人とか本当にいるんだな。急いでいるのかな?まー私には関係ないことだけどね

「月葉!!」

「「「嶺緒!?」」」

まさかの嶺緒!?しかも『私には関係ない』って思っていたばっかりなんですけど!!

「はぁーはぁーはぁー」

すごい息切れをしているけど走ってきたの!?流とお兄ちゃんは顔を見合わせて、何か企み始めた。

「じゃあ俺たちは帰るから。月葉お大事に」

「えっ!!嘘でしょ!?」

本当に帰っていくし…

「はぁーはぁーはぁー」

「ちょっ!大丈夫!?」

凄い息切れの量。最近学校行ってなかったから体力が落ちてるなこれ。

「お前が、はぁーはぁー。急に会いたいって言い出すから、はぁーはぁー。じゃん、はぁーはぁー」

「はぁーはぁーしすぎでしょ」

水でも飲むかな?冷蔵庫に開けてないやつがあった気がする。えっとー…あった!!

「これ飲む?」

「ありがとう」

嶺緒は渡した水をめっちゃ飲む。

「落ち着いた?」

「あぁー」

話したほうがいいよね。病気のこと。

「嶺緒…私ね…病気なんだ」

「え?」

嶺緒は驚いたまで私をみてくる。でも私は続けて話し始める。

「末期の心臓病なの。移植相手が見つからなかったら余命一年なんだ…」
「嘘だ…そんな様子見せて無いじゃん」

「今は大丈夫なだけ。心臓発作で2回倒れてるし、昨日までは辛すぎて何にも感情が出なかった」

「そんな…」

嶺緒変わったな…事故にあってからすごく変わったと思う。こんなに心配してくれるようになった。それは、全部嶺緒が頑張ったからだと思う。だから私も頑張らないといけない。

「これからずっと治療続けていくの?」

「うん…でも、その治療も病気の進行を抑えるだけ。移植相手が見つからない限り私は生きられない」

あと一年。いや正確にいえば一年もない。だって一年未満なんだから。

「俺、これから月葉のお見舞いきたいけど、もう来れないんだ」

「なんで?」

嶺緒は何故か少し悲しい顔をした。

「言えないんだ。すまん」

謝る嶺緒の目の奥に何か抱えている感じがした。なんだろう、この違和感。何か、何かがおかしい。

「だからもう会えない」

「嘘…それっていつかは会えるよね?」

私が聞いた途端、嶺緒の顔色が変わった。

「海外に行くことになったんだ。だからもしかしたらもう…」

「やだっ!そんなの嫌だ!私病気治すから!そうすれば会えるよね!?だったら私頑張るから」

嫌だよ、嫌だよ嶺緒。そんなの嫌だ。

「うん。頑張って病気治したら」

「私頑張るから。だからもう二度と会えないだなんて言わないで」

「分かった。約束する」

嶺緒と約束した。

『私は病気を治す。だから嶺緒はいつか私と会って』

「じゃあ俺そろそろ帰らないといけないから」

「今の約束絶対だからね!!」

嶺緒は病室を出る時にこっちを向いて

「あぁ、元気にしてろよ!」

そう言って帰った。
 
[六日目。今日はみんなが来てくれた。私は治療に専念することにする。嶺緒と約束を叶えるために]