門出のあなたに



笠寺には卒業までにどうしてもしておきたいことがあったのだと言う。



「親友にさ、なんか覚えていてもらえるようなプレゼントがしたかったんだ」



高校に入って友達になったというその親友さんの二月の誕生日プレゼントに、高校を卒業しても自分のことを覚えていてもらえるような、そんなものを贈りたかったのだそうだ。



尾上という名前のその笠寺の親友は、笠寺が太陽のような笑顔を浮かべるのに対して、どちらかというと夜空の月のようにすました表情で校内を歩いているところを見かけていた。



「……それが、こんなキーホルダーなんですか?」



「うーん……、もうそれしか思い当たらなくてさあ……」



最近、家の鍵につけているキーホルダーが壊れたといった尾上に、笠寺は丁度良いから自分がいいものを見繕ってあげると約束したそうなのだ。




「……もっと、記念に残りそうなものって、ありますよね……?」




「うん。だけど、あいつ物欲ないし、余分なものも嫌うから、だったら必需品がいいかなと思って」




尾上のリクエストを聞くと、どうもその色形、更にはリボンの柄までが、小春が鞄につけているキーホルダーに似ているような気がするんだそうだ。




「えーと……、でもおんなじのを取ったら、私とおそろいになりますよ…? リボンも、其処の手芸屋さんで買えますけど」




「あ、それは、竹内がイヤだったら、リボンの柄とか違ってもいいから」




兎に角、尾上のリクエストに応えたい笠寺は、頼む! と頭を下げてくる。




想いを寄せる先輩にそんなに何度も頭を下げられてイヤだなんて言えない小春は、早紀も一緒にゲームコーナーへ向かうことにした。