その6


”ふふふ…、で、コトを済ませた後の会話も忘れられない。だが、あそこで、あんな会話になったのは、オレの押しだけではなく、自然と二人のモードが醸成させたってとこはあったわ”


裕一はあの後の会話を正確に思い起こしていた…。


「…奥さん、ありがとうございました。これで、今日の辛い決心を克服できました。明日から元気に頑張れそうですよ」


「私も明日からの毎日を前向きに過ごせる気持ちになりました。あなたには感謝しています」


「ハハハ…、何と言ってもこれは運命ですよ。でも、運命の導きで引きあわされた方がステキな女性でよかった。あなたのカラダも素敵だったし‥。全部好きになってしまったようだ。すいません。仮にここ以外で会っても、その気持ちは割り切りますから。安心して下さい」


「はい…。あの…、私も有島さんみたいな男性、好きですよ」


「ホントですか!…そう聞いちゃうと、これっきりってのは、今の嬉しい気持ちを丸呑みして返って悲しいかな。いや、辛い…」


「…」


二人はベッドの中で裸のまま仰向きで、真上の天井を向いて情事後の会話を交わしていたのだが…。


***


「…今日の行為は完全にダブル不倫だ。だが、お互いに救われた。そして互いの生活をさらに精一杯生きる糧にできた…。こんな素晴らしい不倫の情事はない…。手前勝手かもしれないが、それが今の実感です」


これは裕一の、この時胸に抱いていた偽らざる本心ではあった。
隣のミユキはしばらく間を置いた後、天井に目線をやったまま一度頷いてから、とつとつなトーンで口を開いた。
微妙に顔を赤らめて…。


「…私、この先も何か辛いことや悩みを抱えたら、有島さんに聞いて欲しいかな…。愚痴を聞いてもらって、できれば相談に乗ってもらって、力つつけてもらって…。叶いませんか?」


それは、意外な言葉だった。
だが、裕一には極めて正確に心へと届いたのだ。
そして彼の返答はもう明快だった…。