その5


”ミユキは小柄だったが、胸は大きめで、ミニグラマーのそそるカラダをしていたな。ふふふ‥、それに意外なほどキス好きで、エロい舌の絡ませ方がなんともだった…”


自動車教習所の落第生二人は、東京郊外の某駅近くの決してきれいではないラブホテルで約1時間ちょいの間、”慰め会”に興じた。


裕一はためらうミユキを慮り、徹底してソフトに誘導した。
そこの場に及んだ彼の言葉は、彼女への愛おしい気持ちに若干クロージングトークを混ぜ込んだアプローチではあった。


「…初めに言います。会って間もないが、ボクは奥さんが愛おしい。…正直に告白すれば、不倫は初めてではない。でも、こんな遊び心のない気持ちなんて一度もなかったんです。…無論、今日であなたを好きになっても、家庭を壊すような野暮は致しません。何しろ今は、へこんだあなたを全部、受け止めたい…」


「有島さん…」


二人はベッドの前で立ったまま、正面から軽く抱き合った。
ミユキはやや、背一杯の背伸びをして…。


***


「…今日の辛い気持ちを一時慰め合い、お互い、人生を歩む活力を取り戻しましょう。だが、私は今正面で向きあってる素敵な女性には、わずかな時間でも溺れてしまうかもしれません」


「私も…」


かくて当時まだ30代前半だった有島裕一と長谷ミユキの長きにわたる熟不倫ライフは、ここにスタートを切ったのである。


***


”彼女がセックスの場数をそう多く踏んでいないというのは、ベッドインしてすぐにわかった。だが、単なるウブではなかったわ。それも裸になって抱き合った瞬間、すぐに見切れたしな(苦笑)”


裕一は努めてソフトタッチで、ミユキの体と心をほぐすかのように優しく前戯をリードした。
ほどなくすると、ミユキは息を荒くしたが、それは上品なもので、あくまでうわべは淑女のカオであった。


”体が温ったまったあとのミユキは地味めではあったが、ベッドの上ではどん欲な反応が垣間見えたよ。こっちも調子に乗って、いろいろ試みてたし(笑)”


記念すべき彼女との一発目…。
グラスを片手に、裕一のその思い出し笑いはしばらく続くのだった…。