結花は幼馴染で親友の加藤望海を足にさせ、あちこち連れ回していた。
 望海はリュックを背負いながら、紙袋を両手で抱えていた。
 両方とも海外ブランドの鞄が入っている。
 望海の顔には少し疲労感が漂っていた。
 車で一宮のショッピング街まで連れて行くように言われ、結花の荷物持ち扱いにされている。
 しかも依田家まで迎えにいってだ。ちなみに依田家から一宮のショッピング街は車で1時間程。加藤家から依田家まで30分だ。
「のんちゃん疲れた? じゃぁランチしよ。どこにする?」
「……う、うん」
 望海は弱々しい声で返事をした。疲れ切ってるのか、返事をする気力がない。
 結花は気を遣ってるふりをして単に自分が食べたい気分だけだった。
 望海が希望した場所が通るとは限らない。
「どこにする?」と聞かれても結花が希望する場所を汲まないといけない。そうじゃないと不機嫌になるからだ。
 まるで「どこでもいい」と答えて不機嫌になる彼女と一緒だ。
 望海はいつも「自分が彼氏だったら絶対に彼女や嫁にしたくない人ナンバーワン」だと思っている。
 子供のころからの付き合い、しかもいとこ同士という最悪なパターン。
 結花の実家が立場的に上なので、呉松家の言うことが絶対である。