「あ、神田さーん、来てらっしゃったのー。お会いできて嬉しい!」
 咲羽はさりげなく神田の腕を触る。
 まんざらでもなく、少しにやついた表情を浮かべた。
 咲羽と一緒に接客しているのは、ヘルプで3ヶ月前に入ったばっかの、朝霧夕芽華だ。
 夕芽華は比較的時間に融通効くタイプで、少しでも咲羽のようになりたいからと、ヘルプで入れる日はできるだけ出勤するようにしている。

「ちゃん、久しぶりだな! 1ヶ月ぶりだっけ?」
「それぐらいですね。会いたかったです!」
「そうか。そうかー! 咲羽ちゃんにも会いたかったよ」
 神田は豪快に笑いながら焼酎を口につけた。
 その姿を彩羽はフフと心の中で笑う。

 咲羽――結花にとってある意味”天職”だ。
 少し男の人に媚を売ればあっさり言うこと聞いてくれる。
 興味ない分野でも知っておかないといけない。
 カナリアに来るゲストは、会社で地位のある人が少なくない。
 そのため幅広い教養が求められる。
 最近はアニメや漫画も"履修"しておかないといけない。
 子供達や孫達の影響ではまった。または昔っから好きという人が少なくないからだ。
 それに最近はアニメや漫画の作品と会社がコラボすることが多い。その中にはゲストの勤め先や関わっている会社も少なくない。