周子(ちかこ)が退所することになったのは、3日後だった。
 相変わらず施設のルールを守らず、夜間に男性利用者を部屋に呼んで、話をしようとしていた時、ベッドから転落し、容態が急変した。

 ――結花の”後ろ盾”がなくなった。

 中規模なホールを取ったものの、周子の葬儀には、夫の明博と子供たちである結花、良輔、静華、良輔の妻である紫乃、加藤望海夫妻など他親族。
 孫達は誰も来なかった。
 良輔が無理して来なくていいと言ったから。
 友人や知人に案内をだしたが、返事は軒並み欠席、香典が送られるぐらいたった。
 良輔としては、親族に周子がどれだけ陰で嫌われてるかアピールするには絶好の機会であった。
 本当は無縁仏にしたいぐらいだったが、明博に止められた。

 葬儀中、結花はかなり泣いていたが、終了後、結花は呑気にお茶すすってるだけだった。
 一度自宅に親族達が呉松家本家の和室に集まり、喪主である良輔主導で今後の話し合いが始まった。
 結花は明博の隣に正座して、こころ踊っていた。

 お母さんが亡くなったって事は、遺産貰えるよね?
 ゆいちゃんのこと大好きだから、沢山いけるよね?

「――この家を売る」
 良輔の言葉に明博が頷く。
 出席したメンバー達は「やっぱりそう来るか」と納得した様子だった。