「えー、ゆいちゃん、お金ないんだもん。ねぇ、お母さん、お金ちょうだいよ! ゆいちゃん、借金払えって言われちゃった。だからさ、お母さん代わりに支払ってよ?」
 お得意の上目使いで結花は周子におねだりする。
「まぁ? かわいそーに。そういえば、いつもより見窄らしいねー。どうしたの?」
 結花はいつもの派手で露出の激しい服ではなく、ねずみ色のスエットで、靴もスニーカーだった。
 鞄もブランド物ではなく、地味なトートバックだった。
 結花の衣類や宝飾品は、田先家への借金のかたとして、良輔によって問答無用で売られた。これは実家にあったものも含まれる。
 罰として売ったのは、かつて結花の元夫だった悠真がやられたことをそのまましているのである。
 周子のその穏やかな口調は結花の心をえぐるのに十分な威力だった。
「んっぐっ、り、りょうにいが……」
 大声で泣き出しそうな勢いな結花に対して、良輔が冷めた口調で「こいつ、人様のもの転売疑惑あり、再婚相手の家の家族のお金を着服していた」と教える。
「まぁ? そんなことしてたの? あー、それは返さなきゃ。いくら?」