「こんなしょぼいのより、このタイプが欲しいの」
 周子はつたないながらも、スマホを操作して、欲しいタイプのパジャマの商品を見せる。

 都会にあるパジャマ専門店でしか売ってないもので、シルク生地のピンク色のパジャマだ。
「あれー、かわいーじゃん! 6万するじゃん? りょうにい買ってあげて。安いっしょ?」
 結花の安いっしょの言葉に「お前何言ってんだ?」と、驚嘆の声を上げる。

 そうだ、こいつはこの母親に甘やかされて、働いても、すぐクビになるような女だ。
 楽して稼ごうと他所の男性とパパ活するような人間だ。
 金銭感覚がおかしくなってるんだ。
 諸悪の根源が平気で高額なパジャマを欲しがる人間だから。
 そもそも買ってくれるだけでましだろ。
 他所の利用者の家族なんて、身の回りのもの替えを一切買ってこないとこもあるというのに。
 ある意味親孝行な息子だと思うけど?
 目の前で今着ているのが気にくわねえなんて遠回しに言われたら、買い足すのが馬鹿馬鹿しくなる。
 
 怒りを静めようと深呼吸して「そんないうのなら、結花に買って貰えば?」と尋ねる。