「お父さん、見てよこれ! タンスにあった私と光河の通帳! なんも記載されてないのに、私達のお金減ってるの!」
 光河と葵依が結花の装飾品やブランド服、そして自分たちの通帳を持ってきた。
「あ、や、やめて! 勝手に持ち出さないで!」
 葵依にすがるように返してとアピールするが、身軽に(かわ)して、周平に見せた。
「ほーん、ははーん、やっぱそういこったか。お前、通帳のアプリ見せろ」
 やばい! どうしよう、またバレちゃう! 
「いいわよ。どうぞ」
 結花はポート銀行のアプリを開いて残高と通帳の出納(すいとう)を見せた。
 このアプリに記録されているのは、以前明王寺店で働いていた時の分と、瀬ノ上家で毎月10万貰っていた時の分。そして離婚後に毎月実娘である陽鞠の養育費5万だけ。
 陽鞠は今年の春に遠方の大学に進学したばかりで、あと3年支払わなければならない。しかし、結花は陽鞠がどこの大学に通ってるか一切教えてもらっていない。
「ほら、なにもないじゃん。またみんなが意地悪するぅー。こいつじゃないきょうの!? 働いてないし!」
 結花は泣き真似をしながら、ちらちらと家族の様子を伺う。

 世界一かわいいゆいちゃんが泣いていたら、みんな駆け寄ってなだめてくれる。