「じ、じゃ、こいつをクビにしなさいよ! お店の評判が下がるから!」
「それは考えときますねー。繰り返し申し上げますが、これ以上うちのスタッフに失礼なことをおっしゃるようなら、営業妨害として警察に通報いたしますよ」
「な、な……」
 赤澤は金魚のように口を開閉して、どこかへ消えていった。
 尾澤の低い声と営業スマイルが効いたようだ。
「ゆいちゃん、大丈夫⁈ 何もされてない?」
 血相を変えて尾澤は、結花を抱きしめるかのようにボディーチェックする。
 結花はうんとこっくり頷く。
「あーっ、ゆいちゃん、顔赤くなってるー! もしかして私に惚れた?」
 調子いい口調でからかう尾澤に結花の顔はさらに赤くなる。
「だ、だって、かっこよかったから……ありがとうございます!!」
 赤澤にあんなにいわれてもするすると言い返してたし、黙らせてたから。
「ちゃんとお礼言えたじゃん! その調子!」
 えへへとさらに口角が上がった結花。
「でも、店長って野崎さんじゃ……」
「半分ほんとで半分嘘。私、店長代理だから。一応各店舗そういう人がいるよ。店長がいないときに同じ権限持ってる人みたいな? この状況で私が店長っていったほうが効果ありそうと思った」
 結花はああ、その手があったかと納得した。