「どうも、トイレ休憩と称して品だししているスタッフに声かけてるんです。挨拶と称して。女性スタッフはもちろん、男性スタッフでも本人の気に入った人しか自分から挨拶しませんからね。嫌いな人はフルシカトですから」
「その彼女のお気に入りというのは……?」
「農産スタッフだったら、相川くん、長見《おさみ》くん、東浦《ひがしうら》くん、安田《やすだ》さんでしょうか。あとは鮮魚スタッフの藤井《ふじい》くんと米沢《よねざわ》くん……」
 野崎は思い当たる人の名前を挙げていく。
 結花のお気に入りは各部門に1、2人いる様子。
「待ってくれ。安田さんって、農産スタッフの子じゃなかったっけ? 3年前に来た」
 女性スタッフの名前が出て思わず目を丸くする陽貴。
 安田の見た目を思い出す。
 背は低めだが、努力家。まん丸とした顔立ちで、少し気が弱いところがある。むしろ結花に押されるタイプだ。一体なぜ。
「そうです。唯一彼女が女性でお気に入りというか上手くやってるのが、安田さんなんです。どうも彼女の可愛さに憧れているそうで……それで甘やかしちゃってるんですね」
「あーなるほど……それでか。彼女は自分を甘やかしてくれる女性なら、心許すからなぁ。彼女の親友である《《従姉妹》》がそうだから」
「従姉妹、ですか?」