夫も娘も帰ってこない。1人での家は寂しい。
 夜の帷《とばり》がそろそろ降りてくる時間帯。
 依田家のリビングは結花が飲み食いしたもので溢れていて、電気もろくにつけておらず、暗いまま。
 いつもなら来ているお手伝いさんも母も来るなと口止めされているため、結花は自分でやらなければならなかった。
 マッチングアプリの相手とも連絡が取れなくなった。
 結花はリビングでソファで横になりながら、スマホをいじる日々。
 あー、だれか私の家の手伝い来て!
 家事代行サービスを呼ぶにもガードが止められていたので無理だ。
「誰よ! カード止めたの!」
 思わずスマホを投げつけようとしたが堪えた。
 まさか夫が? 明細書? そんなのどこにあるか分からない。
 毎月自分と母だけでどれぐらい使ってるのか知らない。
 明細書の通知は夫の方にくるようにしている。
 全ての支払いは夫任せ。
 今財布の中にあるのは予備の1万円。
 普段はカード支払いか電子決算なので、現金をそれほど持ち歩かない。
 支払いも基本的に夫がやってくれるから必要ないと思っている。
 家事代行や宅配呼んでもすぐにお金がなくなるだろう。
 宅配呼ぶか、自分で家事やるかしばらくあれこれ考えていたら、 スマホが鳴った。
 名前の表示を見て結花の声が高くなる。