「その割には楽しそうだね」
と俺が言うと、初は、
「当たり前ですよ!今までできなかった経験が出来たんですから」
と、笑顔で言った。
その無邪気な笑顔に目を奪われながら、ふと上の方を見ると、なぜか初の帽子に雪がついていた。
…なんで下を向いて作業してたのに、帽子に雪がついてんの。
「初、帽子に雪がついてるよ」
初らしいなと思いながら、初の帽子に手を伸ばして雪をはらう。
すると初は、少しうつむいて、小さな声で「あ、ありがとうございます」と言った。
「初ーー…って、冷たっ」
初と会話を続けようとしたら、なぜか俺の後頭部に冷たい感触が。
え、雪?
ぶつけられた方向を見ると、そこには冷たい視線でこちらを見ている宇貝がいた。
「おい、鮫上。倉下に近づくな」
「…いや近づくなって、俺らパートナーなんだけど」
と俺が反論しても、宇貝は何一つ表情を変えなかった。



