うわぁ。いつ見ても神殿長というよりは、物語に出てくる王子様みたいな顔。大好き。
「だって、将来の王妃なんて、無理! そもそも私が聖女だというのすら、ありえないですよっ!」
 十二歳で神殿に連れてこられたときには、なんで王子様がこんなところに? と思ったものだ。あの時東神殿長になったばかりのレオン様は二十歳だって言ってたから、今は二十五歳。ますます素敵になった。
「私が信託を受けて、ミラを聖女だと言ったことが信じられないということですか?」
 レオン様が両手で私のほっぺたをつまんで横に引っ張る。
「信じるとか信じられないとかじゃないですよぉ。偽物だって言ったのは、皇太子なんですからっ。っていうか、レオン様じゃなくて、神様が神託で間違ったこと言ったんじゃないですか? 本当の聖女はソフィア様じゃったとか西の神殿長に神託し直したんですよ、きっと」
 ……うん、確かそんな感じの話を殿下もしていたような気がする。
 レオン様が、私の頬から手を放して大きなため息を吐き出した。
「ミラ……私以上に、神が間違えるわけないだろう……。皇太子も……陛下も何を考えているのか」
 声には怒気が含まれている。
「……ご……めんなさ……い」
 私のせいで、怒らせてしまったんだと、慌てて謝る。
「せっかく、東神殿が中央神殿になれたのに……。レオン様が総神殿長だったのに……」
 レオン様が、私の頭に手をのせた。
「別に、総神殿長になりたいわけじゃないから構わない……よく考えれば、ミラが皇太子妃なんて柄じゃないよな。お前は、私の横で騒いでるのがお似合いだ」
 レオン様の口元が笑っている。あれ? 怒っていない? 
「おかえり、ミラ」
 よかった。ほっとしたら目じりに涙が浮かんだ。
「はい……レオ……ン様……。私、ここが好きです。聖女より、巫女の一人としてずっとここにいられる方が幸せ……です」