婚約破棄された追放聖女は、皇太子と二度目の婚約をする【短編】

 だらだらと冷や汗が垂れる。ごめんなさい、せっかくのフォローの言葉ですが、いつも以上にひどかったんです。陛下や貴族の前だったので緊張していて……。
「ところが、祈りの途中にもかからず皇太子殿下とソフィア伯爵令嬢の二人が礼拝堂に乱入してきました」
 確かに祈りを妨げるのはマナー違反ですが、乱入? 随分敵意のある言葉で報告するんですね? 
 それから、まるで見てきたかのように副神殿長は事細かにあの時のことを報告した。
 すべてを聞き終えると、レオン様が私を抱く肩に力が入った。
「『過ちの者から正しき者に引き継がれる』と西神殿長に神託が下りたのか……」
 レオン様がぼそりとつぶやきを漏らすと、副神殿長がこくりと頷く。
「確認してあります。西神殿長の神託は偽りではないようです」
 レオン様がはぁとため息をついて頭を下げた。
「せっかく、この生活にも慣れてきたというのに……そればかりか、前のようにミラと一緒に国内を回って過ごせると楽しみにしていたというのに」
 何? 私が聖女じゃなくなったことで何か問題が起きるの? まさか、レオン様が嘘の神託をしたといって断罪されるとか? 背中に冷たい汗が下りる。
「ミラ、再び皇太子の婚約者になることをどう思う?」
「は? はぁ? 何を言ってるんですか、レオン様が私は皇太子妃は似合わないって」
 自分の隣で騒いでいるのがお似合いだって……。まさか、聖女に戻ってあの殿下と再び婚約しろと言うの? 
「あー、いや。皇太子妃どころか王妃も似合うはずだ。ミラほど人の幸せを自然に願える者はいない。国民を思い祈りを捧げるミラのような聖女が王妃となれば国は安泰だろう」
 どうしてそんなことを言うの。
「レオン様は、私がいると迷惑なんですか? 隣に私がいるのは……」