”あの日”から、すでに3年あまりが過ぎ去りました。
それは闘病中だった父がこの世から去る半年前…、私たち兄弟3人が父の家に集まった時のことです…。


...


「…オレもそう長くはない。今日は、お前たち3人にこれからのことを告げておこうと思ってな」

私は兄2人を持つ末娘で、3人ともすでに結婚して子供も持ち、それぞれ親とは離れて世帯を構えていました。
父はこの前年に長年連れ添った母を亡くし、この家に一人で住んでいました。

「…と言うことで、お前たちには残してやれるものもなくて心苦しい限りだが、兄弟3人、協力して頼む…」

長く不動産業を営んでいた父ですが、商売は決して楽ではなく、終活の段階に入っても借金の返済に追われる日々だったようなのです。
金融機関の担保に入っている今の自宅も、売却すればすべて借金に当てられ、父が他界した後、私たち兄弟が相続する財産は皆無という状態でしたから…。

「じゃあ、俺たちは帰るよ…」

ひと通りの話が済むと、二人の兄は父からの昼食を共にという誘いも断り、さっさと帰ってしまいました。

結局、この日の昼食は父と私の二人きりになり、出前のラーメンで済ませたのですが…。

...


兄2人はともに、お嫁さんが父とはソリが合わず、末娘の私が夫ともども父と近しくしていることもあってか、晩年の父とはほとんど口もきかない状態だったのです。

そして、父の”告白”が始まったのは昼食が済んだ直後でした。

「…本当は真一と真二にも話すつもりだったんだが…。結局、麻子に全部頼むことになってしまうんだな…」

ここ数年で悪化した複数の持病でしっかりやつれた父は、力なくそう呟くように漏らしていました。

「いいって。ウチのも、お父さんには力になってやれって、そう言ってくれてるしさ。兄貴たちなんかに遠慮することないよ」

私がそう言うと、父は嬉しそうに弱々んしくも、微笑を浮かべていました。

しかし、その後私が耳にすることになる父の話は予想だにしない、ショッキングなものでした…。